私達が旧いABUを使う理由

私達が「敢えて」旧いABUを使い続ける理由

ここで私達が「旧型(最近は”ヴィンテージ物”と言われているそうですが・・・)」リールと言う場合、それらは概ね1980年代初め頃までにスウェーデンにおいて製造されたリールのことを指しています。1980年代初め頃というのは曖昧ですが「ABU」から「ABU-GARCIA」に表示が変わる以前と言った方がよいのかも知れません。
これ以降に開発・製造されたリールは、スウェーデンで製造されたものであっても、部品の形状・点数などが変更されてしまっていて、私達の「是」と思っている部分が「多数」失われてしまいました。ですので、私達はこの時期以後の製品を使用することは(ほとんど)ありませんでした。
実は、手元のアンバサダーなどをメンテナンスしていると目についてはいたのですが、1980年代初め頃までにも、構成部品点数の減少や部品の材質の変化(良いのか悪いのかはわかりませんが)が行われてきていたようでした。殊に、1975年辺りからはこの傾向が目立ちました。
そして、「ABU-GARCIA」への表示変更後にはこの傾向が一層加速された様に感じましたし、主に日本メーカー製のリール製品との価格競争のためと聞いていましたが、リールの軽量化や材料の品質面での変更(低下)が顕著になってきてしまったようです。その後の ABU からスウェーデンで製造された商品が大幅に減少していって、新しいモデルの多くがアジア製に切り替えられていったことからもこのような話が本当であったように感じられました。

 

ABUのリール

私達が ABU に出会ってからのこと。
実際に、私達が ABU の製品を使いはじめたのは(最も長い釣り歴のメンバーさんで)1960年頃からだったそうです。
その当時、 ABU は数ある釣り道具のうちでも非常に高価な物でしたが、他にかなうものがない程に機能も強度も優れた釣具と言われていましたので、今から思えば私達が(私達でなくても?)これに走ったのも当然のことだったかなと思います。また、ルアー釣りを主な釣りとしていた私達にとっては、ルアー「用」の製品と呼べるものが他にはなかったということもありました。選択肢が無かったのですね。釣具を置いているお店で ABU の品物を特にルアー専用と謳っていたわけではありませんでしたが、国産(日本製)のルアーというものがまだまだ多くは見当たらない時代に、沢山のルアーを製造・販売していたアブの製品がより魅力的で信頼できたのは当たり前と言えば当たり前だったと思います。ちなみに、私達の仲間で当時に購入したオリムピック社製のルアー竿をいまだに現役で(ガイドなどはもちろん何度も交換されているようです)使用している者がいますが、何とこれには釣り竿のモデル名として「ルアーロッド」と書いてあるだけ そんな時代でした。それ以来、その頃に買い求めたリール等 ABU の釣具を現在まで使用していますが、なにせ非常に高価だったものでしたから、私達の仲間内でもとても大事にしていた者が多く、どれも意外なほどきれいな状態で残っていたりしています。
これまで40年間にもわたり使い続けることができたのは、ABU の製品が元々頑丈にできていたこともありますが、メーカーとしての ABU や輸入ディーラーが、旧いモデルについても見放すことなく長い期間これらの補修用部品を確保して提供し続けてきてくれたことが非常に大きかったと思います。
エビスフィッシングが輸入ディーラーであった時代には、「基本的にパーツだけでの販売はしない」ということになっていたため、部品代の他にメンテナンスのための費用が常に付いてきたことは、懐具合としては大変痛かった思い出があります。しかし、これも後になって思えば、このようなシステムであったが故に、保守用の部品が散逸してしまわないように管理がうまくできていたのではないかなと良い方に思える部分もあります。おかげでいろいろな思い出のある釣り道具をそのままで使用し続けることができていますから。このあたりからは、本当に真面目にユーザーに対峙している会社だったと感じます。同時に、(少なくとも)この当時には自社の製品をより永く使って欲しいという考え方をしていたのではないかなと感じられたりもします。しかし、「ABU-GARCIA」への表示変更とともにこのような考え方も変更してしまったのでしょうか・・・。私達にはその後は全く違ってしまったように思えます。

ABU の性能は・・・

昔は何かと性能が良い・耐久性が良いと言われてきた旧型の ABU の製品でしたが、どれも購入当初には少しハンドルが重いように感じられるようなものでした。でも、それも使い続けるほどに回転等の動作が滑らかになり、私達の所有するものについては現在までもその滑らかさは失われることの無いままです。かつて使用したことのある日本製のリールが、購入当初は大変滑らかであったものが、使用する毎に滑らかさを失って行ったのとは全く対称的でした。
道具の性能に関しては、私達は、旧い ABU は性能が良いと思っています。ただ、何をもって「性能」とするのかにもよるのでしょう。私達が良いと言う「性能」というのは、主に耐久性にあります。私達仲間の中に、現場でメカニカルなトラブルによって釣りを断念せざるを得ない経験をしたものはまだ一人もいません。釣り「道具」である以上、現場でトラブルを起こさないことは絶対に重要だと考えています。もちろん中には40年間動き続けているものもありますので、今後いつまでノートラブルを継続できるかどうかはわかりませんが、現在でも私達は「他社製もしくは新しい ABU 」よりも旧い ABU の方をより信頼しているのは確かです。
そして何より、私達にとっては、それらの自分達が使用してきた旧い ABU が夫々の手に馴染んでいるんでしょう。現在の製品よりもかなり重いことも含めて。

大体こんな理由で、私達は旧い ABU をいまだに使用し続けています。求める「性能」や「釣りの楽しみ方」について他の基準を持たれている方にとってはもちろんですが、私達同様の基準を重視して見ても旧い ABU 以外にすぐれたものは多数あるんだろうと思います。ただ、縁あってこのページをご覧頂いた方には、こんな釣り「道具」があったということを知って戴きたいと思います。長く付き合うことが出来る道具です。長く付き合うことで、多くの思い出が詰め込まれて行きます。
結局、私達はいまだに手放すことができずにいます。

このサイト内で紹介するものは、多数ある旧型 ABU のうち、私達が主に使っているモデルのみです。私達は旧いアブをコレクションしているわけではありませんので、この他のモデルについての詳細な知識は持ち合わせていませんし、実際に経験した以外の知恵もありません。その為、いろいろな書籍に記されるような細かい知識はここにはありません。このような旧いものをご存知ない方にもご覧頂いて、機会があった時に一度お試し頂ければ、釣りの「道具」について何か違った感じを持って頂けるのではないかと思っています。