ABU Record Spinning Reels
ABU Record Spinning Reel について
アブ社が、カーディナル リールを製造する以前に製造していたスピニングリールは多数あるようですが、ここでは比較的初期のものと思われる Record 500 から Record 700 について紹介します。
ABU Record Spinning Reel 500 600 700
これらが製造された順番は、RECORD 500, Record 600, Record 700 の順番です。
製造されていたのは、RECORD 500 が、1950年頃から。Record 600 が1952年から。Record 700 が1953年からだそうです。これは、以前、あるスウェーデン在住の方から教えて頂いたもので、私自身は真偽についてははっきり確認できていません。
ABU RECORD 500 Spinning Reel
RECORD 500 は、一連のモデルの元祖となるリールです。ここでは、RECORD 500 と記載しておりますが、リール自体にはモデルナンバーは記載されていません。元々このリールは祖父の所有物であったので、以前は何かの表記があったのか否かについても不明です。このモデルナンバーについても、スウェーデン在住の方から教えて頂いたものです。なお、私は、他のメーカー製であるこのリールと全く同様のリールを所有しています。こちらも元々は祖父の所有物でしたので詳細は不明ですが、色と一部の表記「SWISS MADE, C.S-H ZURICH」が追加されている点が異なるだけです。
ABU Record 600 Spinning Reel
Record 600 は、500 からモデルチェンジしたリールです。ここでボディ形状が少し変更されています。機能面での目に見える変更は無いようですが、500 ではプラスティック?製であったスプールが金属製に変更されています。なお、このモデルには、「No.600」と浮き彫りされています。
ABU Record 700 Spinning Reel
Record 700 は、600 からモデルチェンジしたリールです。600 からの変更箇所は、色が銀色になったこと。ベールアームがハーフタイプからフルタイプとなったことです。700 は、非常に長期にわたって製造されたためか、細かく見ていくと色々な変更がありました。
最初期のものは、500, 600 同様にリールの足の部分には塗装がされていませんでした。更に、銀色のスプールには、600 同様の釣り糸止めが設置されています。この次のモデルからリールの足の部分にボディ同様の塗装がされています。この後、銀色のスプールから釣り糸止めが消え、最後にはスプールが黒いものに変更となります。
フルベールタイプとなった 700 は、ギヤ比が 1:2.9 程度と現代基準からは非常に低いものの、今でも十分に使用に耐えるものだと思います。実際、時々使って楽しんでいます。でも、小さい割にとても重たいんです・・・
RHW MODEL について
以前に作成していたページで ABU Record 700 の RHW Model を掲載していました。しかし、今回、内容を全面的に改めて、普段使用している道具のみのページに作り替えて私自身はとても満足していたところに、以前から私達のページを御覧戴いていた方々から「変な物が出品されている。」、「インターネットオークションで、通常の左ハンドルモデルを右ハンドルに組み直した物が出品されていたので、間違った物を購入或いは販売したりしないようにするためにも、もう一度 ABU Record 700 の RHW Model のページを復活させた方が良い。」等というようなメールを戴いてしまいました。私自身はそういった事情を確認してはおりませんが、もしそのような事態がおこっていて、私達のページが役に立つというのならばと思い、再度、掲載するに至りました。再度掲載するにあたっては、その目的に合ったようにしつらえ直すことにし、写真等は若干変更してあります。もし、分かりにくいなど御意見がいただけるようであればさらに検討させていただきます。
さて、本題です。ABU Record Spinning Reel の RHW Model はすべてのモデル(500、600、700)で見られるようです。これらのリールは本体部分の大きな部品がRHWとLHWを製造するについては共用されています。ただ、ハンドルやベールアームなどどうしても共用できない部品が出てきますのでその部分についてLHW用・RHW用を作り替えてありました。
実際、組換えか否かをどう判断するか? リールが組み替えられた物か否かを外観で判断しようとするには、ベイルアームの形くらいしかないかも知れません。ここだけは、RHWとLHWで回転方向が違うため全く反対の形状に作られています。ですのでここさえはっきりすれば写真のみでも判断可能だろうと思います。
各モデルの写真 をご覧頂くとお分かりかと思いますが、左ハンドル・右ハンドルを問わず、ベールアームがスプールの上側にある時のラインローラーの位置がボディのハンドル側と反対側にあるならば正しく組まれていると考えられます。
上のようにご連絡を下さった方々によると、そのリールの紹介には「通常の使用時にハンドルは逆転してラインを巻取る。」と記載されていたそうです。しかし、本来の RHWモデルではそのようなことはありません。天下の ABU がそのような物を作るはずがありません。
私の手元には現在 700 のRHWモデルがありますが、これは他の一般の右ハンドルリールと同じように(正転にて)使用できる物です。もし、これからRHWモデルの購入を狙っている方がおられましたら、以上の点に御注意下さい。
余談ですが、実は、写真に掲載した RHW リールは、現在まで未使用の状態で置いてある物です。当時、RHW仕様があるのを知らなかった私はこのリールを当然LHWモデルだと思って購入しました。しかし、購入後しばらくしてそれがRHWであるのに気がつき、実釣にはLHWしか使用しないために交換をお願いしようとも思ったのですが、その時には購入後すでにかなり時間が経っており、それも言い出しにくかった為にあいかわらず未使用のままです。今だにこのような状態で手元にありますので、もっと詳しくとかもっと写真をといった御要望にもある程度までは対応できると思います。
エビスフィッシングのカタログから
1980年代当時のエビスフィッシングのカタログには、”ABU のスピニングリールが初めて日本に登場したのは1958年頃と言われており、その時のリールは「レコード700」です。当時の販売価格は現在の価値に換算すると10万円を越える高価なものでしたが、それでも、高性能リールということで圧倒的な人気がありました。”とあり、日本にも輸入されていた様子が伺えます。
ABU Record Spinning Reel Series の始まり
これらの ABU Record Spinning Reel Series の始まりについては諸説有るようですが、私の手元に1949年にアメリカで発行された「Spinning Reels & Tackle」という本(父か祖父の購入したもの)があります。そこには当時の世界各国のスピニングリールが紹介されており、その中に「非常に珍しいドラッグシステムを装備しているリール」として、スイス製の Record Spinning Reel があげられています。この本の中にはスウェーデン製の ABU Record Spinning Reel についての記載はないようです。
実際に本を書くにあたっては様々な資料を集めたりしなければならないこと、また、当時の出版準備にかかる時間等は現在とは比較にならないでしょうから、そういうことを考慮すると、スイス製の Record Spinning Reel はこの本の出版時期である1949年よりも(かなり?)以前から存在していたものと推測できるますし、さらに別に写真を掲載してありますが、「Record C.S-H ZURICH」はABU 社初の Record Spinning Reelとなった ABU Record 500と比較して、塗装色の違いとSWISS MADE及びC.S-H ZURICHの文字がないことを除いて全くと言っていい程そっくりなスイス製のリールで、これら2つのパテントについての記載が全く同一であること等からすると、現時点では「スイス製 Record Spinning Reel オリジナル説」が信憑性が高いように思われますがいかがなものでしょうか?